BBB MAG. / RECOMMEND2026.10 — TOKYO

【26年10月】Burn Baby Burn Recommend.

BURN BABY BURN MAGAZINEINDEPENDENT MUSIC WRITING / 2026.10
FULL ARTICLE / 2026.10

今月はアルバム5作品とシングル2曲を紹介します。

ALBUM

Fontaines D.C.『Dopamine Chamber』

Fontaines D.C.『Dopamine Chamber』 ジャケット
ARTWORK / 01

前作『Romance』で大きなブレイクを果たしたFontaines D.C.。新作『Dopamine Chamber』には僕の周りでも賛否両論あるけれど、僕はGREATではなくてもGOODだと思う。何より、この作品の持つ、どこか知らない街に迷い込んだような空気に惹かれる。

先日のPhoebe Bridgersにも感じた、人工的な光と、その中で浮かび上がる孤独。初めて触れるのに、昔から知っていたような懐かしさ。個人的には、今のインディーのムードを象徴する『I Saw the TV Glow』とも地続きに感じる。画面の向こうに、自分の居場所があるように思えてしまう、あの感覚だ。

『A Hero’s Death』の頃には、彼らにThe Cureを感じる日が来るとは思わなかった。けれど、暗さとポップさが同居し、聴き手が入り込める世界をつくる今の姿には納得もする。ダブリンという具体的な土地から始まったバンドが、今は音楽の中に新しい居場所をつくっている。そう捉えると、変化の中にも一貫性が見えてくる。

僕にとって本作は、彼らがスタジアム級の存在になってからの第一作。Måneskinのような華やかで身体的なロックへ向かう道もある中で、孤独や違和感を残したまま、自分たちの世界を広げる選択をしたことを強く歓迎したい。

そして、その世界が僕には、現実の東京ではなく、映画や音楽を通して海外で想像された架空都市「トウキョー」に感じられる。見覚えがあるのに、どこにも存在しない街。その街に漂う孤独や懐かしさを、日本にいる僕が受け取っている。その不思議な距離感も、このアルバムに惹かれる理由だと思う。

(秋山真三)

Ugly (UK)『The South Facade』

Ugly (UK)『The South Facade』 ジャケット
ARTWORK / 02

Squidから聴き始めて、carolineにもつながっていくような面白さがある。Uglyの『The South Facade』は、僕にとって、その二組を好きな理由が交わるアルバムだ。

リズムや展開に振り回される緊張感がありながら、声が重なると急に景色が開ける。次に何が起こるのかを追っていたはずが、いつの間にか歌に引き込まれている。演奏の細部を聴く楽しさと、メロディに身を任せる気持ちよさが、同じ曲の中にある。

それぞれの楽器がよく動いているのに、声の入る余地がきちんと残されているのもいい。誰かのフレーズに別の音が応え、そのやり取りから曲の表情が変わっていく。複雑な構成を持った音楽なのに、人が集まって演奏している感触がとても近い。僕がcarolineを思い浮かべるのは、合唱の響きだけでなく、この互いの音を聴き合うような空気でもある。

一方で、素朴な親密さだけでは終わらない。落ち着いたと思ったところでまた曲が動き出し、聴く側の耳を遊ばせてくれる。そのせわしなさにはSquidにも感じる興奮があるけれど、Uglyはそこから歌の親しみやすさへ戻ってくる。その往復が面白い。

Squidを入口に、carolineまで聴いてきた耳で、このバンドに出会えたのが嬉しい。別々に好きだった音楽の面白さが、ここでつながったように感じる。

(秋山真三)

Wishy『Nature’s Pill』

Wishy『Nature’s Pill』 ジャケット
ARTWORK / 03

USインディアナポリスを拠点に活動するオルタナティブ・ロックバンド、Wishyの2ndアルバム。1曲目の「All The Rage」からバッチリで、男女のコーラスと力強いギター・サウンドに心躍る。そこから4曲目までは、シューゲイズやパワーポップ、グランジ、ドラムマシーンのループ等など90’s前半の空気感を纏いながら、曲ごとに表情を変えながらそれぞれ素晴らしい。元HoopsのKevin Krauterを中心にベテランとまでいかないまでも手だれ達が集まったバンドの安心感。人生はなかなか上手くいかないけれど、心の奥の心地良い部分を射抜いてくれるような会心の一打。おすすめです。

(遠藤孝行)

Dominic Fike『HOW TO QUST SMOKING』

Dominic Fike『HOW TO QUST SMOKING』 ジャケット
ARTWORK / 04

Dominic Fikeの事を知ったのはいつだっただろう。元BROCKHAMPTONのKevin Abstractと一緒にやった時か普通にアルバム『Sunburn』の時だったか『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の時も聴いていたかも。シンガーソングライターであり、ラッパーであり俳優という、楽曲もラップなんだけどギターが前面に出てくる感じが彼のシグネチャー。どこかBECKっぽいというラベリングをしてしまうのは野暮な気がしてしまうほど、Dominic Fikeはどこまでも自由。ツアー中にわずか8週間で作られたという今作は、どこか開かれていて、今までより風通しの良さが魅力になってる。超良いです。

(遠藤孝行)

DIIV『ZIRP!』

DIIV『ZIRP!』 ジャケット
ARTWORK / 05

前作『Frog in Boiling Water』の重苦しく閉塞的なサウンドから一転、今作ではA. G. Cookを迎え、電子音やポップなメロディが大胆に取り入れられています。

しかし、単に聴きやすくなったというわけではありません。

1stアルバム『Oshin』にもあったニューウェイヴ的な質感や、どこか歪で不安定なサウンドが印象的で、My Bloody Valentineの『Isn’t Anything』が持つ危うさや、Jerskin Fendrixの音楽に漂う奇妙なユーモアと不穏さにも通じるものを感じます。

美しいメロディのすぐ隣に、何とも言えない違和感が存在している。心地よいはずなのに、どこか落ち着かない。ポップでありながら、決して無邪気ではない。

そうした相反する感情が、無理に整理されることなく、ひとつの音楽として成立しているところに今作の魅力を感じます。

前作のように重厚な音の中へ沈み込んでいくのではなく、今作では軽やかなメロディの中に不穏さが紛れ込んでいます。表現の仕方は変わっても、DIIVが持つ独特の危うさは失われていません。むしろ、その輪郭がより鮮明になったようにも感じられます。

来年2月には、待望のリベンジ来日公演も控えています。

前回もチケットを購入していただけに、今回の公演は本当に楽しみです。もちろん今回もしっかり購入しました!

今度こそ無事に入国できることを願っています!

(秋山真三)

SINGLE

The Paris Match「Tune Into Me!」

The Paris Match「Tune Into Me!」 ジャケット
ARTWORK / 06

今回初めて紹介するThe Paris Match。今、僕がかなり推しているバンドです。新曲「Tune Into Me!」を聴いて、その期待がさらに大きくなりました。

初期衝動やフレッシュさに惹かれる新人が多い中で、彼らにはThe Lemon Twigsばりの楽曲の完成度を感じる。初めて聴くのに、以前から知っていたように耳になじむメロディ。ただ、その親しみやすさの中にも、もう一度聴きたくなる細かな表情がある。

揺れるリズムに、かすれた歌声とサックスが絡み、ピアノがほのかな哀愁を添える。ソウルやブルースの感触が、ポップな曲の中に自然に溶け込んでいる。僕が言う完成度は、一音ずつ隙なく磨かれているということより、それぞれの音が自由に動いても、一曲としての魅力がぶれないということ。その余裕と、若いバンドの熱っぽさが同居しているところがいい。

GeeseのCameron Winterが、先行曲「Settle Down」のプロデュースに参加していることにも納得する。僕には両者に、昔のロックの語彙を使いながら、演奏する人間の癖や揺らぎをそのまま面白さに変えていく、共通した感覚があるように思える。The Lemon Twigsを連想するソングライティングと、Geeseにも感じる生々しさ。その両方から語りたくなるところに、彼らへの期待がある。

聴き慣れた音の中にも、新しいバンドに出会う興奮はまだある。「Tune Into Me!」には、それを素直に信じさせてくれる力がある。まずはこの一曲から。これからどんな作品を作るのか、今のうちから一緒に追いかけてほしいバンドです。

(秋山真三)

Twisted Teens「Stalks」

Twisted Teens「Stalks」 ジャケット
ARTWORK / 07

この曲、どこかViagra Boysっぽさもあって好きだ。気だるそうなのに妙に熱があって、ふざけているようにも切実なようにも聴こえる。そのつかみきれない感じに惹かれる。

カントリーの匂いもあるけれど、懐かしい音楽を聴いているという感覚には収まらない。声も音も癖が強いのに、曲はすっと入ってくる。最初はその佇まいが気になって聴いていたはずが、いつの間にかメロディを追っている。

聴いているうちに、この音を鳴らしているのは一体どういう人たちなんだろう、と気になってくる。曲を好きになるのと同時に、バンドのことまで知りたくなる。こういう出会いは嬉しい。

(秋山真三)